誰も見たことも建てたこともない、 <br>建築史に残る革新的な住宅を3D印刷。
PARTNER’S INTERVIEW / 築-KIZUKI- 五十嵐理香氏<後編>

誰も見たことも建てたこともない、
建築史に残る革新的な住宅を3D印刷。

<前編>今なら第一人者になれる!」と、建築業未経験なのに3DCPを衝動買いした件。

3Dコンクリートプリンティング(以下、3DCP)の住宅建築を受注した五十嵐理香氏は、スマトラ島でオノコムADC推進室の那須貴寛と運命的な出会いを果たす。この出会いがなければ、3DCPで「基礎から2階建て構造体まで」を現場で一体印刷する革新的な住宅「Stealth House」が誕生することはなかった。


スマトラ島の出会いから1ヶ月後、那須は仙台へ足を運び五十嵐氏と再会、正式に3DCP住宅の設計を依頼された。那須は「フィリピンで購入を検討していたものと同じメーカーの3DCPをお持ちだったので、実機を試せる良いチャンスだという思いもあり依頼を受けました」と、設計を受けた理由を話す。

ADC那須さんとのMTGの様子 株式会社 築(きずき) 五十嵐理香氏
現在フィリピンを拠点とする那須とリモートで雑談

基礎から2階の構造体まで現場で印刷する日本で前例のないプロジェクトが本格始動した。多層階にこだわったのは那須だった。国内でも平屋の3DCP建築事例はあったが、多層階の建築例はない。構造が複雑な多層階建築の成否は、優秀なパートナーを集められるかにかかっていると考えた那須は、“日本初”という称号が最強メンバーを集める呼び水になると考えた。だから平屋ではなく、多層階にこだわったのである。

「那須さんは技術や知識はもちろんビジネスセンスがずば抜けて優れています。このプロジェクトに国内トップレベルの企業やクリエイターに参加していただけたのは、那須さんの“日本初”にこだわった戦術眼と人脈があればこそでした」と五十嵐氏は那須を評価する。

設計受託から数ヶ月後、3Dで設計した住宅のモックアップが五十嵐氏の元に届いた。

3Dモデルを前にMTGしている様子 株式会社 築(きずき) 五十嵐理香氏
写真は検証用に3Dプリントで制作された模型。

「巻貝みたいな形でびっくりしました。施主さんに見せたときも最初は『なんだこれ?』と言っていましたが、すごくおもしろいと評価してくれました」(五十嵐氏)

あまりに奇抜な設計だったこともあり、事前に依頼していた地元の施工会社が断りをいれてきたため、施工もオノコムが担当することとなった。

2025年3月、巨大な3DCPが建設地に運ばれて設置され、プリンタの射出口からモルタルが吐出された。みるみるうちに住宅の構造体が積層されていく。この建築物の最大の特徴は、基礎から構造体、配管空間まで一体で連続印刷することだった。意匠デザイン・構造フレーム・設備スペースを一体化した三層の構造体をワンステップで成形することで品質・強度・デザイン自由度を高めるとともに、工数の大幅削減を実現した。

StealthHouseの建築現場

那須自身、3DCPの知識はあったが実際の物件を手がけたことはなかった。それでも初めての3DCPの設計・施工を滞りなく実現できた背景には、オノコムが得意とするデジタルツインの活用体制と、専門的なパートナーの存在があった。

施工の流れをバーチャル上で再現し、設計、構造、工事といった各領域の意見を束ねながら全工程を導き出した。実際の工事は、大きな修正が発生することなく、スケジュール通りに完遂された。

「オノコムの社員は、どんな困難に直面しても絶対音を上げません。どうやったらできるかしか考えていないんです。那須さんだけではなく施工監督の渡邉さんも、全員が持ち場以上の仕事をするという強い意識をお持ちでした。もしもオノコムと出会っていなければ満足のいくプロジェクトにならなかったと思います。私の一生分の運を使い果たしちゃったかもしれませんね」と五十嵐氏は笑う。

株式会社 築(きずき) 五十嵐さん インタビュー

2025年11月、「Stealth House」が完成した。約5年間、奮闘を続けてきた五十嵐氏の挑戦は日本建築史に残る画期的な成果をあげた。今後の展望を問うと「日本だけではなく世界で3DCP建築に取り組み、新しい産業を生み出したい。そのために世界規模で人材が不足している3DCPオペレーター育成アカデミーをはじめます。会社の利益を上げることも大事ですけど、次の世代にどんなバトンを渡せるかが大事なので、それができる事業に取り組みたい」と答えてくれた。

たった一人で始めた挑戦は世界へ羽ばたく翼となった。オノコムとの連携を深めながら、KIZUKIはどこまで羽を伸ばすのか、その活躍に今後も期待したい。

株式会社 築(きずき) 五十嵐理香氏

プロフィール

「ONOCOM-ZINE」とは?

オノコムのIT活用を推進するiTeamsが自社を独自に取材し、事実に基きつつも適度に脚色を加えながらユルくお届けする情報発信メディアです。