日本初、RC3Dプリントによる2階建て住宅を施工。 ― 多層階建築の未来が、ここから始まる。
1.概要
建物名 |
(仮称)O-house in Tsukidate |
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所在地 |
宮城県栗原市 |
建築主 |
個人 |
主な用途 |
一戸建ての住宅 |
設計期間 |
2024年9月-12月 |
規模 |
2025年3月-10月完成予定 |
敷地面積 |
344.81㎡ |
延べ床面積 |
49.92㎡ (1F:30.52㎡ , 2F:19.40㎡) |
最高高さ |
約6.3m |
担当 |
3DCPプリンタ機械・オペレーション: 株式会社 築/ 五十嵐 共同研究大学: 東京都立大学/ 國枝・名島 協賛企業: LIXIL, 山口産業, 昭和化学工業, 積水化製品工業、シーカ・ジャパン, フォンテトレーディング, 積彩, Spacewasp, ウインテック, JFDエンジニアリング, キナン,レンタルのニッケン, セーファ, BLINK, Studio55, CUPIX, SCG etc. |
2-1.既存3DCPと比較しての新規性・未来性
本プロジェクトは、日本で初めてRC(鉄筋コンクリート)3Dプリンターによって「基礎から2階建て構造体まで」を現場で一体印刷した住宅です。 従来、基礎・構造・仕上げは別工程で複数業者が分業してきましたが、本事例ではそれらを一台の3Dプリンターで一貫施工。現場作業の効率化と品質の均一化を同時に目指しています。
また、これまでの建築では不可能だった「多層階をプリンターでつくる」という挑戦に、国内で初めて取り組んでいます。
これまで3Dプリント建築は、主に平屋や小規模構造に限定されてきました。しかし今回の事例は、構造の強度、設計の自由度、安全性という多層階ならではのハードルをすべて突破し、3Dプリンター建築の新たな地平を切り拓くものです。
さらに、壁は意匠・構造・設備が一体化した三層構造をワンステップで成形します。
この「多機能壁」の一括施工により、現場の工程が激減し、設備配管の自由度が向上、施工ミスやバラつきも最小限に抑制されます。
言い換えれば、これは「構造とデザインと機能が、ひとつの壁から同時に生まれる未来の建築」の具現化といえます。
RC3Dプリントで階層を超える建築が可能になったことは、集合住宅、商業施設、災害仮設、さらには宇宙建築にまで応用が期待される、構造技術の歴史的転換点です。
2-2. 既存工法 vs 3DCP
- 型枠工事不要
- 部材運搬によるコスト・CO2削減
- スラブ基礎以外の工法では世界的にも珍しい連続基礎から印刷
項目 | 既存工法(RC等) | RC3Dプリント工法 |
---|---|---|
施工プロセス |
基礎 → 型枠 → 鉄筋 → コンクリート打設 → 脱型 → 配管・仕上げ |
基礎~構造体~配管空間までを一体で連続印刷 |
工程数 |
多段階・分業制(複数業者が関与) |
ワンストップ(1台のプリンターで完結) |
施工スピード |
数週間~数カ月 |
数週間で構造体を出力可能 |
必要人員・技能 |
熟練職人・多職種が必要 |
最小限の技術者とオペレーターで対応可能 |
コスト |
人件費・型枠費・材料ロスが多く割高 |
材料ロスが少なく、型枠不要で低コスト化可能 |
設計自由度 |
直線・平面形状が中心 |
曲線・複雑形状にも対応(構造とデザインの融合) |
壁構造の機能 |
意匠・構造・設備を別々に施工 |
3層構造で同時成形(意匠・構造・設備空間の一体化) |
品質のばらつき |
現場・職人に依存(天候・技能で変動) |
機械制御により品質が安定 |
脱炭素・環境性 |
廃材・型枠材・施工エネルギー負荷が高い |
型枠レス・材料最適化で環境負荷を軽減 |
将来的応用領域 |
在来建築、一般住宅 |
集合住宅、災害仮設、宇宙建築など幅広く展開可能 |
3. 各社が目指す3DCPの未来
KIZUKI
3Dコンクリートプリンティング(3DCP)を“特別な技術”から、“当たり前の選択肢”へと進化させ、建設の新しい未来を"築く"ことを目指します。
日本では建設業の人材不足が深刻化する中、3DCPという技術は、新たな役割と新たな担い手を建設業に呼び込むことが可能です。
プログラマー、デザイナー、ロボットオペレーター、材料開発者など、従来とは異なる職能が建設現場に必要とされ、3DCPは“人を減らす技術”ではなく、“新しい働き方を生み出す技術”。
建設の未来に“新しい職業”と“新しい可能性”を創ります。
ONOCOM
当社は、ADC推進室(Advanced Design & Construction)を立ち上げ、3Dコンクリートプリンティング(3DCP)事業を本格化させています。
国内では2階建て住宅の建設に着手し、技術確立を目指す一方、フィリピンでの社会課題解決に取り組みます。
COBOD社の3Dコンクリートプリンター「BOD3」をフィリピンに導入し、現地で手に入るコンクリートを活用することで、年間70万〜90万棟不足している住宅問題の解決に貢献します。
将来的には、商業施設の印刷といった大規模な建築プロジェクトや、コンクリート以外の樹脂素材を用いたインテリア製造など、建築の枠を超えた幅広い部分で3Dプリンタ技術等の先端技術の可能性を追求していきます。
4. 本プロジェクトの新規性と将来性
パネルを現場で組み立てるのではなく、その場で印刷する住宅として日本初のRC3Dプリンター2階建となります。
日本では多くの住宅が2階建であることから、将来的に量産環境が整えば価格が下がり、消費者にもメリットがあるといえます。
今回は先端技術※が一棟のプロジェクトに集まっており、一度作り込めば従来のようにプロフェッショナル集団が再度詳細な設計をしなくても、コピーできる再現性があります。
※先端技術:素材・デザイン・施工法・2種類の断熱材・樹脂系3Dプリンタによるインテリア・磨きだし技術・自動墨出しetc